EVANGELION? SS

「スレイヤーズ、かもしれない・・・」

 

 

私の名はリナ・インバース。

美少女天才魔道士。

黒魔術最強の呪文、「竜破斬(ドラグ・スレイブ)」。

そして、世界をも滅しうる諸刃の剣、「重破斬(ギガ・スレイブ)」。

これほどの魔力を統(す)べる者は、世界広しと言えども、私1人。

私、1人。

私が、1人。

1人の、私。

なんだか不思議・・・。

あれは太陽。1つしかないもの。

あれは空。目に見えないもの、目に見えるもの。

あれは・・・、

「ねえ、リナ、そろそろ食事にしようよ」

あれはガウリィ。

ガウリィ・ガブリエフ。

とても腕の立つ剣士で、自称、私の保護者。

伝説の光の剣を持っている。

けれど、性格に難ありで、今ひとつ活躍しない。

「わかったわ、ガウリィ」

私の許しを得て、ガウリィは料理を始める。

ガウリィは料理が好きなの。

それはもう、料理を作るのが好きなの。

自分の料理を他人が無残に噛み砕くのを見て、無上の喜びに浸るの。

背徳の世界。

よくわからない。

「なに言ってるんだよ、リナ!」

「・・・なに?」

「僕だって、好きでいつも料理作ってる訳じゃないんだ! みんなが誰もやらないから、仕方なしにやってるんじゃないか!!」

「そう?」

「そうだよ!!」

普段はクラゲのように存在感のない彼も、時折、激しく怒る。

こうなると、手がつけられない。

光の剣も放り出して、逃げ出すの。

でも、結局は、戻って来る。

結局は、屈するしかないの。

それは、彼にとって、料理がみんなとの絆だから・・・。

「ほら! ウダウダ言ってないで、さっさとご飯作んなさいよ!!」

「わ、わかったよぉ・・・」

「全く、軟弱なんだから、あんたは!!」

あの、下品に叫んでいる女がアメリア。

アメリア・ウィル・テスラ・セイルーン。

名前の長いだけが取り柄の女。

聖王都セイルーン第1王子フィリオネルを父に持つ第2王女。

つまり、セカンドって事。

がさつでわがままで、「自分こそが正義」と、傍若無人に振る舞っている。

ただ胸がでかいだけで、

ただ胸がでかいだけで、

ただ胸がでかいだけで、

ただ胸がでかいだけで、

ただ胸がでかいだけで、

ただ胸がでかいだけで、

「そこっ! なにブツブツ言ってんのよ!!」

「・・・」

「なによ、言いたい事があるんなら、ハッキリ言ったらどうなの!?」

「確かに、旅はしてるけど・・・」

「え?」

「このお話は西遊記じゃないのに・・・」

「誰が猿かぁ〜っ!!」

「猿とは言ってないわ・・・」

「その目が言ってんのよ!! その目が!!」

「アメリア、もうやめなよ」

「うるさいわね! あんたは、そっちの隅っこで、ご飯作ってりゃいいのよっ!」

「な、なんだよ、ひどいよ!」

「私に向かって、その口の利き方はなによ! このっ! このっ!」

「や〜め〜ろ〜よ〜!」

「こらこら、アメリア、いい加減にしないか」

「あ〜ん、だって、だって、ガウリィが〜」

「そんなに怒ると、せっかくの可愛い顔が台無しだぞ」

「きゃ〜ん♪ ハ〜イ、わかりましたぁ(はぁと)!」

「すまなかったな、ガウリィ、さあ、料理を続けてくれ」

「で、でも、僕はもう・・・」

「俺は女の子にちょっかいを出す事しか出来ない。だが、君には君にしか出来ない、君になら出来る事があるはずだ」

「・・・」

あの、場違いな説教をたれているのがゼルガディス。

ゼルガディス・グレイワーズ。

元は人間。

でも、今は合成人間(キメラ)。

人間でもあり、邪妖精(ブロウ・デーモン)でもあり、岩石人間(ロック・ゴーレム)でもある。

つまり、3重スパイのようなものね。苦しいたとえで悪いけど。

たび重なる不幸の反動で、女の子のあとばかり追いかけるようになった、かわいそうな人。

「はっはっはっ、おいおい、安心してる相手だと遠慮がないな」

「そう?」

「悲しい恋をしてるからだな」

「・・・・・・・・・どうして?」

「涙の通り道にほくろのある人は、一生泣き続ける運命にあるからだよ」

「そんな所にほくろはないし、悲しい恋もしてない。もう、あっち行って」

「あれ、つれないなぁ」

「みんな、食事が出来たよ」

ガウリィが食事の準備を済ませて、私達を呼ぶ。

「ゼルガディスさ〜ん、私とお隣同士で食べましょ(はぁと)」

「ああ、今行くよ、アメリア」

「リナも食べようよ」

「うん」

急がなくちゃ。

食卓は戦場。

みんな、とてもたくさん食べるから、うかうかしていると、すぐにご飯がなくなってしまう。

でも、私だって負けない。

私は死んでもお代わりするもの。

ガウリィの作った料理を囲んで4人が座る。

では、いただきます。

「食べる物、food があるという事実は幸せにつながる。良い事だよ」

「わあっ!」

「きゃあっ!」

「なんだ!?」

「・・・なに?」

「常に人間は、心に痛みを感じている。心が痛がりだから、生きるのもつらいと感じる・・・」

「「「「・・・」」」」

いつのまにか現われて、訳のわからない事を言っているのはゼロス。

獣神官ゼロス。

獣王ゼラス・メタリオムの腹心たる高級魔族。

理由は、声が同じだから。

貴方は私と同じね。

「ガラスのように繊細だね、特に君の心は・・・」

そう言って、生ゴミがガウリィの手を握る。

「うわあっ!」

とっさに、ガウリィが光の剣を構えた。

「烈光の剣(ゴルン・ノヴァ)。異界の魔王ダークスターの生み出せし、人間にとって忌むべき存在。それを利用してまで生きのびようとするリリン。僕にはわからないよ・・・」

こっちこそわからないわ。なに、リリンって? これだから魔族ってキライ。状況をわきまえないで。

「なにしに来たんだ!?」

ガウリィが叫ぶ。

「唐突だけど、リナさん、僕を消してくれないか?」

「え?」

「さあ、僕を消してくれ。そうしなければ君らが消える事になる。滅びの時を免れ、未来を与えられる生命体は1つしか選ばれないんだ。そして、君は死すべき存在ではない。君達には、未来が必要だ。ありがとう、君に会えて嬉しかったよ」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

言うだけ言って、黙り込んでしまった。

でも、それって私に言ってるの? どうしてガウリィの顔を見つめたままなの?

「ゼロス、君が何を言ってるのか、わからないよ・・・」

混乱した頭でつぶやくガウリィ。

「ねえ、魔族って、自分を含めた世界の全てを無へと帰す事が目的なんじゃないの? なんであんただけを消さなきゃならないのよ?」

アメリアも首を傾げる。胸がでかいくせに。

一方のゼロスは、顔の前に人差し指を立てて、ニンマリと笑う。

「それは秘密です」

本当にわからないわ。

「まあ、いいじゃないか、リナ」

ゼルガディスが爽やかげな笑顔で言う。

「彼女というのは、遥か彼方の女と書く。女性は向こう岸の存在だよ。我々にとってはね。男と女の間には、海よりも広くて深い川があるって事さ」

「僕、男なんですけどね」

「はっはっはっ、なんだ、つまらないな」

2人共消すっていうのは駄目かしら。

まあ、とにかく、

「わかったわ、それじゃあ消してあげる。最強呪文「竜破斬(ドラグ・スレイブ)」で」

「竜破斬(ドラグ・スレイブ)。魔王シャブラニグドゥウの力を借りし、人間にとって忌むべき存在。それを利用してまで生きのびようとするリリン。僕にはわからないよ・・・」

・・・

気にしないで進めましょう。

もうオチも近いから。

では、

 

「黄昏よりも暗きもの 血の流れよりも紅きもの 時の流れに埋もれし 偉大なる汝の名において 我ここに闇に誓わん・・・」

 

「「「「・・・」」」」

「・・・」

「「「「・・・」」」」

「・・・」

「えっと、リナさん?」

「リナ、どうしたの!?」

「・・・」

「どうした、リナっ!?」

「なにやってんのよ!?」

「ひと休み・・・」

「「「「いや、ひと休みじゃなくて!」」」」

 

「我等が前に立ち塞がりし 全ての愚かなるものに・・・ふぅ・・・」

 

「だから、そんなとこで止まってんじゃないわよ!」

「いやはや、波瀾に満ちた旅だな」

「あとちょっとだから、頑張って、リナ!」

「お願いしますよ、リナさん!」

 

 

「我と汝が力もて 等しく滅びを与えん事を・・・」

 

 

「「「「・・・」」」」

「・・・」

「「「「ちょっと!?」」」」

「疲れた・・・、もういいの・・・」

「「「「おい!」」」」

「そうじゃないわ。こういう時は「もういいの? そう、良かったわね」って・・・」

「「「「言うかっ!!」」」」

 

 

私の名は、リナ・インバース。

美少女天才魔道士。

黒魔術最強の呪文、「竜破斬(ドラグ・スレイブ)」。

そして、世界をも滅しうる諸刃の剣、「重破斬(ギガ・スレイブ)」。

これほどの魔力を統(す)べる者は、世界広しと言えども、私1人。

でも、実際に使えた事はないの。

だって、呪文が長いんだもの。

 

 

ここで、タグローズのいじけた横丁に住むヘンザさんのコメント。

「おまえら、旅やめろよ、もう」

 

 

そう・・・? そうかもしれない・・・。

 

 

「スレイヤーズ、かもしれない・・・」  終わり

 

 

 

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